ホリゾントスタジオとは?知っておくべき基本と注意点について
レンタル撮影スタジオについて検索していると、「ホリゾントスタジオ」という言葉をよく目にするかと思います。
「ホリゾント」という言葉は聴き慣れないものかと思いますが、写真に関わる人は、知っておいて損はない言葉の一つです。
今回はそんな「ホリゾント」や「ホリゾントスタジオ」について、言葉の定義や特徴など、基本となる内容をご紹介していきます。
ホリゾントスタジオとは
スタジオについて検索していると、よく目にする「ホリゾント」という言葉。ほとんどの場合、「ホリゾントスタジオ」というようにスタジオとセットで登場していると思います。
ホリゾントスタジオとはどういうスタジオなのか。
一般的には、「外光を遮断し、床と壁面のつなぎ目が緩やかな曲線でつながっている」スタジオのことをホリゾントスタジオと呼びます。
大抵のホリゾントスタジオは、壁面が白で塗られており、白ホリスタジオと呼ばれます。
ホリゾントとは
ホリゾントは、ドイツ語で水平を表す「Horizont」が言葉の由来ですが、撮影業界では先ほど紹介した「外光を遮断し、床と壁面のつなぎ目が緩やかな曲線でつながっている」という形で定義されています。
アールホリゾントとは
ホリゾントスタジオの中には、アールホリゾントと呼ばれるスタジオがあります。この「アール(R)」とは半径を意味する「Radius」に由来する、壁からの半径距離の単位です。スタジオのサイズにもよりますが、ほとんどの場合、600〜900Rが基本的な曲面のサイズになります。半径60〜90cmです。
なぜホリゾントスタジオでは床と壁のつなぎ目を緩やかにつないでいるのでしょうか?
それは床と壁のつなぎ目に影が出来にくいからです。影が出来にくいことによって、広い空間を表現でき、またバックペーパーや布バックなどをわざわざ用意する必要がなくなります。
外光を遮断して、ライティングで光を表現するメリットをしっかりと享受できるのが、このアールホリゾントスタジオなのです。
2面Rホリゾント、直角ホリゾント
ホリゾントスタジオは、アール部分が正面だけの1面Rホリゾントが基本となります。ですが中には、左右どちらかの壁もアールになっている2面Rホリゾントや、左右どちらもアールになっている3面Rホリゾントのスタジオも存在します。
特殊な例ですと、天井もアールになっているドームスタジオなどもあります。車の撮影など、天井も写る撮影で使用されています。
また、床と壁の境界部分がアールになっていない直角ホリゾントというスタジオもあります。アール部分がないので、壁ギリギリまで近づいて撮影を行うことが可能です。バストアップの撮影やテーブルでの物撮りなどで使われます。
アールホリゾントも直角ホリゾントも、どちらもそれぞれの良さがあることから、正面はアールホリゾントで他の1面が直角ホリゾントになっているような、ハイブリッドなスタジオも近年は増えています。
その他にも、壁が黒い黒ホリスタジオや、クロマキー用にグリーンやブルーに塗られているスタジオも存在します。
ホリスタジオ利用のメリット
撮影で白ホリスタジオを利用することのメリットは、どんなものがあるのでしょうか?
今回は、代表的な3つのメリットを紹介します。
- 撮影に特化している
- シンプルである
- 流行り廃りがない
それぞれ確認していきましょう。
撮影に特化している
白ホリスタジオは、写真を撮影するためだけに設計されているスタジオです。撮影に特化している空間ですので、撮影を行いやすいということは、言うまでもありません。
白ホリスタジオでは、照明機材を使用して光を作り、撮影を行うことがほとんどです。照明を使用して、被写体をきれいに撮影できるように作られています。
照明機材を利用することが想定されているので、スタジオで利用することのできる、最大電気容量も大きく設定してあるところが多いです。スタジオによっては、200Vの電圧を用意しているところもあります。
ハウススタジオは、一般家庭と同程度の電気容量のところが多いです。一方、白ホリスタジオは、最大電気容量が大きく、様々な種類の機材を同時に利用することができます。
照明機材だけでなく、大型扇風機などを使用することもできますので、撮影での表現に幅を持たせることが可能です。
シンプルである
白ホリスタジオは、壁一面が真っ白で、家具なども配置されておらず、シンプルな作りとなっています。
そして、シンプルであるからこそ、被写体の魅力をしっかりと引き出してくれます。
アングル、シャッタースピード、ぼかし、ライティング…など、様々な要素によって、被写体は多様な表情を見せます。そういった被写体の表情、魅力をより際立たせてくれるのが白ホリスタジオなのです。
また、作りがシンプルであるために、白ホリスタジオは、ライティング次第で無限の広がりを感じさせることが可能です。床と壁面の接続面がゆるやかになっていることもあり、光の当て方次第で、奥行きをまったく感じさせないこともできます。
シンプルであるがゆえに、被写体の魅力を最大限引き出し、実際の広さ以上の広がりを感じさせることもできるのです。
流行り廃りがない
白ホリスタジオは、壁一面が真っ白で、シンプルな作りをしています。そのため、写真の背景として、流行り廃りとは無縁です。
写真には、もちろん流行り廃りが存在します。数年前まで流行っていた撮影技法が、時代遅れになってしまうということは、よくあることです。そして、そのスパンは、SNSの発達とともに短くなっています。
流行を追いかけていくことは、表現の幅を広げるという点では重要なことです。ですが、一度撮影した写真が時代遅れにならないために、あえて流行から降りるという観点も大切ではないでしょうか。
白ホリスタジオで撮影できる、背景が白い写真。一見派手さはないですが、被写体の魅力をしっかりと引き出し、背景が時代遅れになることもありません。
背景によって時代を感じさせることなく、被写体の魅力にフォーカスすることができるのは、白ホリスタジオならではのメリットです。
白ホリスタジオは、撮影に特化した空間として、今回紹介したようなメリットを持っています。
これらのメリットをしっかりと活かすことで、よりよい一枚を撮影できるはずです。今回ご紹介したメリットを念頭に、白ホリスタジオを活用してみてください。
ホリゾントスタジオ使用時の注意点
ホリゾントスタジオ、特に白ホリスタジオは汚れや傷がつきやすいという弱点があります。
ホリゾントスタジオは、職人の手によって複数の工程を経て作り上げられます。
- 骨組みの組み立て
- ボードの組み立て
- 下塗り
- 樹脂・パテ塗り
- 乾燥
- 研磨
- 仕上げ
表面に塗れられているのはホリゾント専用の塗料です。メーカーによって異なりますが、
- 塗料が伸びやすい
- 耐水性がある
- 塗り重ねても割れにくい
- つや消しである
というような特徴があり、白ホリ専用塗料を何度も塗り重ねて、真っ白な白ホリスタジオは作られています。
先ほども述べたように、白ホリスタジオは汚れや傷がつきやすいです。例えば、尖った靴を履いていると、傷や割れが入ってしまいます。
白ホリスタジオを使用する際には、靴を綺麗に拭く、靴を脱ぐ、シートを敷く、やたらと白ホリ部分には入らないなど汚れや傷がつかないように注意を払いましょう。
とはいえ、どんなに気をつけていても白ホリはどんどん傷や汚れがついてしまうのでメンテナンスが必要です。パテ埋めや塗装、研磨などスタジオスタッフによって日々メンテナンスが行われています。
また使用する際に、特別白くて綺麗な白ホリで撮影したい場合には、スタジオにお願いすることで塗り直しをしてもらえます。
おすすめの白ホリスタジオ
編集部がおすすめする白ホリスタジオをテーマ別でご紹介しています。
まとめ
ホリゾントスタジオは撮影スタジオの主流、王道と呼んでも差し支えのないものかと思います。撮影に特化した、真っ白で、光を作りやすいスタジオはカメラマンに無限の可能性を提供してくれます。
ホリゾントスタジオの基本や特徴をしっかりと理解して、みなさんの撮影で活用してみてください。